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大阪地方裁判所 昭和44年(わ)504号 判決 1970年9月10日

本籍

奈良県高市郡高取町大字森三八番地

住居

大阪市阿倍野区天王寺町北二丁目二番六号

土地建物販売業

巽忠治

大正一五年六月二〇日生

本店所在地

大阪市阿倍野区天王寺町北二丁目一番五号

名称

巽住宅株式会社

代表者氏名

巽敏子

右巽忠治に対する所得税法違反、法人税法違反、右巽住宅株式会社に対する法人税法違反各被告事件につき、検察官宇都宮龍一出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人巽忠治を懲役一〇月および罰金二、〇〇〇万円に、

被告人巽住宅株式会社を罰金六〇〇万円に

処する。

被告人巽忠治が右罰金を完納することができないときは、

金四万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置す

る。

被告人巽忠治に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑

の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

第一、被告人巽忠治は、大阪市阿倍野区天王寺町北二丁目一番五号において、「やまとや」の商号で土地建物販売業を営んでいる者であるが、所得税を免れようと企て、

一、昭和四〇年度分の所得金額が七八、二〇四、二四一円、これに対する所得税額が四九、三一五、五〇〇円であるにもかかわらず、正規の会計帳簿を記載せず、売上金額を圧縮し、売上収入金の一部を架空名義預金口座に預入して秘匿するなどの不正行為により、右所得金額中七六、三九一、七四一円を秘匿したうえ、昭和四一年三月三日、大阪市阿倍野区阿倍野税務署において、同署長に対し、所得金額が一、八一二、五〇〇円、これに対する所得税額が三一二、五五〇円である旨過少に偽つた同年度分の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度分の所得税四九、〇〇二、九〇〇円を免れ、

二、昭和四一年度分の所得金額が一一三、七一二、五五〇円、これに対する所得税額は七五、八八四、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により、右所得金額中一一一、七三七、五五〇円を秘匿したうえ、昭和四二年五月一三日、前記税務署において、同署長に対し、所得金額が一、九七五、〇〇〇円、これに対する所得税額が三三四、三八〇円である旨、過少に偽つた同年度分の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度分の所得税七五、五五〇、一〇〇円を免れ、

第二、被告人巽住宅株式会社は、大阪市阿倍野区天王寺町北二丁目一番五号に本店を置き、土地建物の売買仲介業等を営むもの、被告人巽忠治は、被告人巽住宅株式会社の従業者としてその業務を総括掌理しているものであるが、被告人巽忠治は、被告人巽住宅株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一、昭和四〇年三月一日から昭和四一年一月三一日までの事業年度において、所得金額が二九、四九三、〇〇四円、これに対する法人税額が一〇、七四七、四〇〇円であるにもかかわらず、公表経理上売上金額を圧縮計上する等してこれによつて得た財産を被告人巽忠治に対する預け金として簿外に留保するなどの不正行為により、右所得金額中二八、二四六、一三九円を秘匿した上、昭和四一年三月三一日、大阪市阿倍野区阿倍野税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が一、二四六、八六五円、これに対する法人税額が三八六、五〇〇円である旨、過少に偽つた法人税確定申告書を提出し、よつて同年度分の法人税一〇、三六〇、九〇〇円を免れ、

二、昭和四一年二月一日から昭和四二年一月三一日までの事業年度において、所得金額が五八、六七〇、四〇〇円、これに対する法人税額が二〇、三二四、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により、右所得金額中五六、六七八、四八五円を秘匿した上、昭和四二年三月三〇日、前記税務署において、同署長に対し、右事業年度分の所得金額が一、九九一、九一五円、これに対する法人税額が五五七、七三〇円である旨、過少に偽つた法人税確定申告書を提出し、よつて同年度分の法人税一九、七六六、七〇〇円を免れ

たものである。

(証拠)

判示全事実につき

一、被告人巽忠治作成の収税官吏に対する上申書、確約書、確認書(四通)、回答書

一、収税官吏作成の同被告人に対する質問てん末書(一二通)

一、同被告人の検察官に対する供述調書(五通)

一、収税官吏作成の市川増雄、谷崎安英(三通)、杉山利雄(三通)、中泊忠(三通)、紙谷仁三郎、山中啓介、巽健司、国川勇、山野政徳(二通)、船岡恒子、寺田竹春、林寛治、奥山清司、松本静雄、中川茂、井上元三、榊原隆造、藤本忠雄、谷崎美智子、青木直一、巽敏子(一〇通)、原田洋一、松葉譲に対する各質問てん末書

一、国分吉広、株式会社告知社(取扱者長井某)、岡田拡治、田中富子、山田茂、谷崎好春(二通)、青木直一(二通)の収税官吏に対する各供述書

一、巽健司、山崎教雄、三田村和夫、深田熊雄、藤本孝司、武田典子、水本ミキエ、山田茂、巽正、巽英子、巽敏子作成の収税官吏に対する各確認書

一、株式会社告知社(取扱者長井某)、ライオン歯磨株式会社関西総務部庶務課、戎土地代表者新田鉄治、王不動産株式会社(代表取締役田間斉次郎)、浅倉英二、上ノ宮商事辻本勇、日本開発同盟杉村泰男、杉本商事、丸清こと大岡清一、山一土地建物株式会社山本勝夫、福田英子、籔内作次郎、松本商店水本ミキエ、谷崎美智子、青木直一、巽敏子、株式会社住友銀行寺田町支店作成の収税官吏に対する各回答書

一、三菱銀行生野支店作成の収税官吏に対する確認書綴四綴(大阪国税局査察記録第一五号の一、二、三、四、一三)

一、大正相互銀行美章園支店作成の収税吏に対する供述書綴二綴(前同記録第一五号の五、六)

一、住友銀行寺田町支店作成の収税官吏に対する確認書綴三綴(前同記録第一五号の七、八、九)

一、和歌山相互銀行天王寺支店作成の収税官吏に対する確認書一綴(前同記録第一五号の一〇)

一、関西相互銀行百済支店作成の収税官吏に対する供述書および確認書各一綴(前同記録一五号の一一、一二)

一、収税官吏小山和男作成の調査てん末書八綴(大阪国税局査察記記録第一三号、第一八号ないし第二〇号、第二三号ないし第二六号)

一、収税官吏小山和男作成の昭和四五年九月八日付調査報告書

一、領置してある印鑑一個、ゴム印一個、入出金控帳一冊、造作工事土地購入控帳一冊、手帳一冊、昭和三八年度家上地購入契約書綴一綴、昭和四二年度営業経費(銀行関係)一綴、昭和三八年ないし同四二年重要書類綴一綴、やまとや支払関係綴一綴、現場別収支明細帳一冊、仕入帳一冊、支払帳一綴、営業用契約控一冊、支払予定および見積帳一冊、日記帳一冊、契約書控一冊、メモ二枚、高石町土地売買一件書類一綴、高安土地分割関係書類一綴、杉山利雄関係書類綴一綴、不動産売買契約証書一通、価格決定関係書類綴二綴、契約書綴一八綴、アパート文化住宅契約者家賃控帳一冊、総勘定元帳三冊、工事台帳一〇冊、領収書綴三綴、現場別売上台帳一綴、納品請求書綴二八綴、所得税源泉徴収簿一綴、領収証綴四綴、価格決定票綴一綴、領収証控五冊、売掛帳一綴、見積書二〇冊(以上記載順に昭和四二年押第五四号の一ないし三五)

判示第一の事実につき

一、阿倍野税務署長井上清藤作成の証明書四通(昭和四〇年度、同四一年度所得確定申告書、所得税修正確定申告書添附のもの)

一、大阪府天王寺府税事務所長、同阿倍野府税事務所長、同東大阪府事務所長、同堺府税事務所長、同豊能地方事務所長、同中河内地方事務所長作成の大阪国税局宛各回答書判示第二の事実につき

一、巽敏子作成の証明書(定款添附)

一、被告人巽住宅株式会社の登記簿謄本

一、阿倍野税務署井上清藤作成の証明書二通(昭和四〇年度、同四一年度法人税確定申告書)

(法令の適用)

被告人巽忠治の判示行為中第一の一、二はいずれも所得税法二三八条一項に、第二の一、二はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、情状により判示第一の各罪につき所得税法二三八条二項を適用したうえ各所定刑中判示第一の各罪につき懲役刑と罰金刑を併科することとし、判示第二の各罪につき懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、罰金刑については同法四八条二項により各所定罰金額(判示各逋脱額相当額)を合算した金額の範囲内で、同被告人を懲役一〇月および罰金二、〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金四万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、なお情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

被告人巽住宅株式会社の判示第二の各行為はいずれも法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各所定罰金額を合算した金額の範囲内で同被告人を罰金六〇〇万円に処する。

(裁判官 梶田英雄)

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